シェーヴルと楽しむロワールワイン
フランス ロワール地方は、「フランスの庭(Jardin de France)」とも呼ばれる風光明媚なワイン産地として知られています。ロワール川は中央高地を発して北上し、西へと向きを変えて大西洋に注ぎ込みます。1,000kmを超えるフランス最長の大河です。その中流域から大西洋に向かって西へ流れていく流域に、重要なワイン産地が集まっています。テロワールも品種も多様で、変化に富んださまざまなスタイルのワインが造られています。
そして、ロワール川中流域は、シェーヴルと呼ばれる山羊乳製チーズの一大産地でもあります。8世紀に起こった「トゥール・ポワティエ間の戦い」でサラセン人がこの地に残した山羊とチーズ造りの文化が広がったと言われています。
代表的なシェーヴルは、シャヴィニョル、サント・モール、ヴァランセなど。それぞれ個性豊かな味わいを楽しむことができます。また、フレッシュな若いものから、熟成してうまみが増したものまで異なる味わいが楽しめるのも魅力です。
シェーヴルは、独特の酸味と風味があり、もしかしたら苦手な方もいらっしゃるかもしれません。合わせるワインによっては、その風味が目立ってしまうことも。しかし、相性のよいワインとのペアリングは格別。ロワール地方で造られるシェーヴルには、やっぱり同郷のロワールのワイン。まさにお互いを高め合う抜群の組み合わせです。
Your Cellarでは、さまざまなスタイルのシェーヴルとロワールのワインのペアリング特集をお届けします。シェーヴルの旬は、春から夏にかけて。今年の春は、ロワールのワインとともにさわやかな味わいを楽しんでみませんか。
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Chavignol
& Sancerre
シャヴィニョル
コロンとした円筒形が特徴的なシャヴィニョル。ロワール川の中間あたりに位置するサントル地区の、サンセールのすぐ西にあるシャヴィニョルという村の名が付けられたチーズです。シャヴィニョル村とその周辺の指定地域で作られています。古くからクロタン・ド・シャヴィニョルの名で親しまれてきました。この地方の言葉で「窪み」や「へこみ」を意味するクロ(crot)という単語からきていて、洗濯に利用した川のほとりの窪みの土地でチーズの水切り型が作られたことに由来するとも言われています。
さわやかな酸味とミルクの風味があり、ほくほくとした豊かな味わいです。若いうちは、ややしっとりとした印象。外皮は白からアイボリーの色合い。熟成に従い、水分が抜け身が締まり、外皮に青灰色のカビが出てきます。この頃になると、酸味は穏やかになり、キノコや木の実の風味が楽しめます。同郷の白ワイン サンセールとは鉄板のペアリング。熟成してからは、サンセールの赤もおすすめです。バケットにのせて焼いたシャヴィニョルをのせたサラダは定番。
原料乳:山羊 タイプ:シェーヴル
ドメーヌ・フアシエ サンセール シュール・ル・フォール 2022
ロワール川とシェール川の流域にブドウ畑が散在すサントル地区で最も有名なサンセール。ドメーヌ・フアシエは、サンセールに1742年から10代にわたり続くワイナリー。2011年からビオディナミ農法を導入し、テロワールを表現した豊かさとフィネスを持つワインを造っています。シュール・ル・フォールは、大きい石がごろごろとあり、下層にはキンメリジャンがあるブザンセの石灰質土壌で栽培されたソーヴィニヨン・ブランから造られます。この土壌由来の素晴らしいミネラルとマンゴーや蜂蜜、スパイスの香りと豊かでまろやかな口当たりが楽しめます。同郷のシャヴィニョルとの相性は抜群。しっかりした酸はシェーヴルの酸味と調和し、懐の深い味わいはシェーヴルの風味を包み込みます。他のシェーヴルともとてもよく合うので、まずはこのワインでいろいろなシェーヴルをお楽しみいただくのがおすすめです。
品種:ソーヴィニヨン・ブラン タイプ:白/辛口 価格:5,720円(税込) -
Selles-sur-Cher
& Anjou Blanc
セル・シュール・シェール
ロワール川の支流シェール川一帯で造られる、シェーヴルの中でも最高傑作の一つと言われるチーズです。底がやや広がった円盤形で、表面に木炭粉がまぶしてあります。熟成するに従って、表面には細かいしわが寄り灰色に変化していきます。外見とは対照的に中身は輝くように白く、とてもきめが細かくなめらかで繊細な味わいです。上品な酸味、塩味が感じられます。若いうちは酸味が強めで、熟成とともに酸味は穏やかになりまろやかな味わいになります。さわやかな辛口のサンセールやシュナン・ブランのワインと合わせるのがおすすめです。格を感じるチーズなので、ちょっといいワインと合わせると幸せです。
原料乳:山羊 タイプ:シェーヴル
シャトー・スーシュリー アンジュー・ブラン ブラン・イヴォワール 2022
シャトー・スーシュリーはフランス ロワールのアンジュー・ソーミュール地区の都市アンジェの近くに位置するワイナリーです。28haの畑を所有し、ブドウ畑では剪定から収穫まで全て手作業で行い、2022年ヴィンテージより有機認証も取得しています。アンジュー・ブランは補助品種の使用を認められていますが、このワインはシュナン・ブラン100%で造られます。青りんご、洋ナシ、ハーブや白い花の香りにレモンオイルのニュアンス。バランスのとれた口当たりは、この地域特有のシスト土壌由来のミネラル感によって、純粋で正確な味わいとなっています。この品種の特徴がよく表れた、さわやかさの中に複雑さを持つ魅力的なワインです。最初は酸が際立ち線が細い印象を受けますが、次第に開いて奥行きと繊細な果実味が感じられる味わいに変化するので、ぜひゆっくりとお楽しみいただきたい1本です。きれいな酸味となめらかで繊細な味わいを持つセル・シュール・シェールとは、品のあるペアリングとなります。
品種:シュナン・ブラン タイプ:白/辛口 価格:4,950円(税込) -
Chabichou
& Muscadet Sevre et Maine
シャビシュー・デュ・ポワトゥー
ポワトゥー地方で造られる、スマートな円筒形のチーズ。シャビシューの歴史は古く、8世紀にトゥール・ポワティエの戦いで、アラビアから侵攻してきたサラセン軍がチーズの製法を残していったのが起源と伝えられています。アラブ語で山羊を意味するシェブリ(Chebli)が、やがて「シャビシュー」に変化したのではないかと言われています。
外皮は薄く、中味は白く均質できめ細かな生地です。ほどよい酸味とミルクの甘みのバランスは絶妙です。ヘーゼルナッツの風味も感じられます。若いうちは、身も味わいもソフトです。熟成すると、白い生地の表面にはグレーやブルーのカビが広がり、内部の生地はほっくりと締まってきて、うまみとコクが深くなります。辛口の白ワインとともに。熟成したものはピノノワールとも楽しめます。
原料乳:山羊 タイプ:シェーヴル
ドメーヌ・ド・ラ・トゥール・ガリュス ミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌ シュール・リー ラ・トゥール・ガリュス 2023
ドメーヌ・ド・ラ・トゥール・ガリュスは1680年に、フランス ロワール ペイ・ナンテ地区、ナント市から支流を少し上った場所に位置するゴルジュで創業したワイナリーです。ゴルジュは、特徴的なガブロと呼ばれる斑れい岩の土壌を持ちます。このワインは、ドメーヌの中で最も若いブドウ樹(平均樹齢35年以下)が植えられている区画のムロン・ド・ブルゴーニュから造られます。若木ゆえのフレッシュさとともに土地のポテンシャルの高さからのしっかりとした果実味とミネラル感があり、早いうちから楽しめるスタイルのワインに仕上がっています。レモンなどの柑橘系のアロマとミネラル感、大西洋を思い起こさせる塩味とヨード香が感じられます。ライトなだけのミュスカデではなく、澱の影響によるうまみが顕著で、シェーヴルの味わいとマッチします。上品なうまみが美味なシャビシュー・デュ・ポワトゥーと好相性です。
品種:ムロン・ド・ブルゴーニュ タイプ:白/辛口 価格:2,860円(税込) -
Sainte-Maure
& Sancerre Rouge
サント・モール・ド・トゥーレーヌ
トゥーレーヌ地方で生まれたサントモール・ドゥ・トゥーレ―ヌは、薪の形をしていて、表面に木炭の粉がまぶしてあります。中心には型崩れを防ぐための藁が通されています。クリーミーなテクスチャーで、山羊乳特有の個性をもつチーズです。若いうちはやわらかで新鮮な酸味があります。熟成が進むにつれて、水分が抜け締まってきて、表面には細かいしわが寄ってきます。味わいは、ナッツのような風味が現れ、うまみとコクが増し、より複雑で濃厚になっていきます。若くても熟成しても楽しめます。ロワールのソーヴィニヨン・ブランとは間違いのない組み合わせ。若いときにはヴーヴレのスパークリングワインやクレマンなどと、また、熟成したものは、軽やかな赤ワインとも。
原料乳:山羊 タイプ:シェーヴル
ドメーヌ・フアシエ サンセール ルージュ イコノクラスト 2020
サンセールのドメーヌ・フアシエが造る、ピノ・ノワールの赤ワイン。ブザンセと呼ばれる石灰質土壌、サン・ドゥルシャールと呼ばれる泥灰岩質の土壌、粘土質土壌で栽培されたブドウから造られます。平均樹齢は45年。「イコノクラスト=伝統に反する者」の名の通り、「伝統に反して」造られる挑戦的なワイン。長期熟成タイプのサンセールとは正反対の純粋でシンプルな果実味を持つワインを求めて、より自然に近い状態(亜硫酸無添加、アンフォラ熟成)で造られています。現在でもフレッシュ感があり、チェリーやラズベリーなど赤いベリー系の果実の風味が広がります。心地よい酸味となめらかなテクスチャーがあります。軽やかながら、果実味、酸味、タンニンなどの要素は充実しています。今回は熟成が進み始め、1番うまみが強かったサント・モール・ド・トゥーレーヌとの組み合わせでご紹介します。双方の酸味やうまみがマッチし、シェーヴル特有の風味も包みこむ度量があるワインです。
品種:ピノ・ノワール タイプ:赤/ミディアムボディ 価格:5,940円(税込)
<< あとがき >>
今回Your Cellarでは、実際にシェーヴルとロワールのワインを合わせてペアリングを検証しました。思っていた以上に、フアシエのサンセールは包容力があり、どのシェーヴルとも相性は抜群でした。2件のチーズ屋さんから取り寄せたチーズは、どれもとても美味しく、さすが専門店の保存状態!と感動。ちなみに、シャヴィニョルはできるだけ若めのものをお願いしました。今回は1番シェーヴル特有の風味が強かったのはサント・モールでしたが、一方でうまみも格別でした。個人的には、セル・シュール・シェールの品格のある味わいと、うまみや酸味のバランスが素晴らしかったシャビシューが印象的で、思い出すたびにまた食べたくなっています。出産を終えた母山羊が、新鮮な草を食べてミルクを出す春から夏にかけてが、シェーヴルの旬。ぜひ春になったら旬のシェーヴルをねらってみてください。
<< 参考:チーズ購入先 >>
■シャヴィニョル、シャビシュー・デュ・ポワトゥー: チーズ専門店アルパージュ
■セル・シュール・シェール、サント・モール・ド・トゥーレーヌ: フェルミエ