1995年、テヌータ・ルーチェは、ヴィットリオ・フレスコバルディとロバート・モンダヴィという20世紀を代表する2人のワイン醸造家によって始められたプロジェクトです。2人の夢は、お互いの文化・情熱を融合させ、モンタルチーノの地で前例のないユニークで傑出したワインを造ること。そこで、国際品種であるメルローと、モンタルチーノの土着品種であり誇りでもあるサンジョヴェーゼのブレンドで造られたモンタルチーノ初のワイン「ルーチェ」を生み出しました。
2004年以降、フレスコバルディの単独所有に変わり、それを進化ととらえ、さまざまな改革を行ってきました。ブドウの果実味を大切にするため、樽をアメリカンオークからフレンチオークへ変え、またコルクは短いものから長いものへと変更しました。そうして、初リリースから30年経った今でもなお、その光「ルーチェ」は輝き続けています。
ルーチェのブドウ畑はモンタルチーノの南西に位置し、標高は350~420mと、モンタルチーノの中でも最も標高の高い場所にあります。森に囲まれているため、生物多様性に富み、ブドウの生育にとって非常に良好な環境です。また、日中は気温が高くなる一方で、夜間には風が吹き続けるため気温が下がり、昼夜の寒暖差が生まれます。その結果、ワインにはフィネスやビューティーを感じさせる味わいが育まれています。
畑の上部はガレストロ土壌で水捌けが良く、養分も少ないため、サンジョヴェーゼの栽培に理想的です。畑の下部は粘土質が多く、メルローに適した土壌となっています。
またテヌータ・ルーチェの畑は全て有機認証を受けています。持続可能な農業を目指し、ワイン醸造では、極力手を加えず、土壌から最高の果実の表現を引き出すことを信念にしています。大切な畑で収穫されたブドウは、光学式自動選果台を用いて一層厳密に選果。また、醸造用タンクには、ワインへの影響を最小限に抑えるためチューリップ型の赤いセメントタンクを採用しています。この形状により発酵中の自然対流がスムーズに起こり、適切なブドウにとってやさしい抽出が促進されるようになり、またタンクに設置された配管のおかげで細かな温度管理が出来るようになりました。こうして、エレガントでピュアな果実味を持つワインが生み出されています。
ティム・トリプトリー氏は「ルーチェはどのヴィンテージにおいてもフレッシュさが一貫している」と高く評価しています。今回リリースされた2022年も、メルローに由来するまろやかでフレッシュでピュアな果実味が前面に出ているため、今でも十分に楽しめ、パワフルで豊かな果実味やポテンシャルの高さを体感できます。
また、これから5~6年熟成を重ねていくにつれ、メルローに代わり、サンジョヴェーゼ由来の酸味やドライなタンニンや複雑味が出てきて、リリース後との味わいの変化を楽しむことが出来る1本です。ぜひお手元に、30年の記念すべきヴィンテージ2022年を数本置いて、ご自身で味わいの変化を楽しんでみてはいかがでしょうか。
■ティム・トリプトリー氏を迎えての30ヴィンテージ垂直テイスティング @テヌータ・ルーチェ
2024年9月、ルーチェの30年の歴史を称える特別なプロジェクトとして、モンタルチーノのテヌータ・ルーチェで、ティム・トリプトリー MW(Master of Wine & クリスティーズ ワイン&スピリッツ国際ディレクター)による、ルーチェ30ヴィンテージを網羅した初の垂直テイスティングが行われました。ランベルト・フレスコバルディとともに、初ヴィンテージの1993年から2022年までの30ヴィンテージのルーチェを試飲し、各ヴィンテージの個性が丁寧に綴られた、まさにアンソロジーともいえるテイスティングノートが誕生しました。1993年から始まったこの物語は、30年にわたる革新と挑戦の軌跡を辿り、2022年ヴィンテージへと続きます。
下記に、Your Cellarで取り扱っているルーチェの3つのヴィンテージをティム・トリプトリー MWによるテイスティングコメントとともにご紹介します。
<New!> テヌータ・ルーチェ ルーチェ 2022
紫色に輝きを帯びて反射する濃厚な色で、ブラックベリーや桑の実、ブラックチェリー、プラムといった黒系果実やベリー系の香りが際立ち、スミレの繊細なフローラル香が華やかさを添えています。オーク材の新樽から由来する芳醇なアロマを感じられ、甘いバニラやシナモンのスパイスのニュアンスと見事に調和しています。フルボディで洗練されたきめ細かなタンニンと、生き生きとした爽やかな酸味が絶妙なバランスを生み出しています。アルコールが温かみをもたらし、果実の凝縮感と風味豊かなアロマが見事に調和し余韻の長さが印象的です。ストラクチャーの完成度が高くタンニンの質感からも、今後20年において、熟成による更なる向上が期待できます。2028年から2045年までが飲み頃です。
テヌータ・ルーチェ ルーチェ 2021
深みのある濃厚な紫色で、香りは若々しくフルーティーで、甘くジューシーなブラックチェリーやブルーベリー、モレロチェリーのアロマが際立ちます。オーク材の新樽から由来するスパイスのニュアンスが心地よく溶け込み、バニラやシナモンの香りにスモーキーなトースト香のアクセントが加わり印象的です。口に含むとフルボディで力強く重厚感を放っています。プラム、カシス、ブラックチェリーの濃密な味わいに、ほのかなビターアーモンドのニュアンスが加わり、複雑な余韻を生み出しています。2028年から2040年までが飲み頃です。
テヌータ・ルーチェ ルーチェ 2020 ギフト箱入
暖かく日当たりのよい環境に恵まれたヴィンテージの特性を感じられ、熟したチェリーや乾いた大地のニュアンス、さらにドライフルーツのほのかな香りが広がります。トーストしたオークの存在感が際立ち、セージやタイムなどのドライハーブの香りが深みを加える複雑で風味豊かな香りです。口当たりは力強くフルボディで重厚。しっかりとしたタンニンが口中を引き締め、黒系果実の凝縮感あふれる味わいが豊かに広がります。他の近年のヴィンテージと比較すると酸味が少なく感じられます。今から2035年までが飲み頃です。
■ルーチェの畑で撮影された月の写真
今回ルーチェ30周年アニバーサリーを迎えるにあたり、テヌータ・ルーチェでは印象的な夜の月の写真を使用しています。これはミラノ在住の日本人写真家、西川よしえさんがルーチェの畑にテントを張って撮影したものです。彼女のこれまでの作品が素晴らしいことに加え、ルーチェに対して日本が大きな役割を担っている点を踏まえ、撮影をお願いしたとお聞きしました。ブドウの生育と深い関わりを持つ月の画像を選んだことには特別な意味が込められており、30年にわたり静かに着実な成長を遂げてきたルーチェの姿を象徴しているように感じられます。1993年から始まった、30年にわたるルーチェの物語に思いをはせながら、ぜひじっくりとお楽しみください。